ヒエロニムス・ボスやピーテル・ブリューゲルは、どんな夢を見たのだろうか?
心霊現象やホラーをテーマにした漫画家は、毎日が悪夢ばかり見て気が変になりそうという話を昔聞いたことがあります。
これだけ異様な怪物をたくさん描いていたら、本当に夢に出てきて悩まされそうなのですが・・・
それとも陰陽師の操る式神のように、彼らは怪物たちを操り、絵を手伝わせていたのでしょうか?
冥府へ下るキリスト(ビーテル・フリューゲル)
キリストが冥府へやってきた。
少し覗くつもりが、とてつもなくおぞましい世界を見て、ちょっと関心を持った様子なのか?
生前に何らかの罪を犯して、冥府に落ちた人々が、降り立ったキリストに助けを求めようと群がっていますが「ここに落ちたのは自業自得なのだから、ここで罪を償いなさい」と光の中で諭しているようです。
冥府というだけあって、実に多種多様な怪物たちが描かれています。
フリューゲルは、こんな絵を描いていて夢に見なかったのだろうか?
本人がいれば、悪夢に悩まなかったか、聞いてみたいと思いました。
マレヘムの魔女(ビーテル・フリューゲル)
何か治療をしているのでしょうか?
魔女の傷病治療の評判を聞きつけた人々が、群がっているように見えますが、その治療はなんだかおぞましい。
よく見ると頭を切開していたり、本当に治療をしているのか、かなり疑わしく怪しい雰囲気を描ききっています。
解説を調べると、この魔女たちは、善良な村人を騙して治療の真似事をするニセ医者だとか。
そう考えると、とても恐ろしい絵です。
魔術師ヘルモゲネスの転落(ビーテル・フリューゲル)
なんだか奇怪な怪物たちが喜々として騒がしい。
まるで祭りの賑わいのようですが、中央には逆さまにされた魔術師ヘルモゲネスがいます。
彼はいったい何をしたのでしょうか?
右側にいる聖人は、大ヤコブで、ヘルモゲネスが呼び出した怪物たちを、逆に操ってヘルモゲネスを捕らえさせた様子を描いているそうです。
大きな魚は小さな魚を食う(ビーテル・フリューゲル)
この絵が描かれた時代に、ネーデルランドではことわざが流行していたそうです。
この「大きな魚は小さな魚を食う」は、「強い権力を持ったものは、弱いものを支配して、破壊することができる」という意味です。
しかし、一番大きな魚は、人間が持つ大きなナイフで腹を切り裂かれています。
この意味は、権力を持ち私腹を肥やしすぎると、最後には腹を割かれて権力を失って没落していくということです。