仏像でよく見る十一面観音菩薩を切り絵で表現したいと思って、十一面ある顔をどのように描けばいいのか?最初はとても悩みました。
これはその制作記録です。
切り絵を制作する時に、どこから切り始めるか?というのは作家によって違うと思います。
僕は、いちばん大事な部分から切り始めます。
顔なら「目の部分」から。
なぜなら、ここを後の方にまわすと、失敗した時に致命的なものになるから。最悪の場合は、最初から切り直しになる可能性もあるのです。
大事な部分を最初にクリアしておけば、精神的にも良いのです。
目ができたら、次は口です。口も表情を決定づける大事な部分なので、どんな表情をつけたいのかを想像しながら紙を切っていきます。切る線の角度が微妙に変化するだけで、表情がガラリと変わってしまうので、ゆっくりと慎重に切ります。
ちょうどおでこの上にあるのは化仏。大きさは親指の爪ぐらいなので、慎重に切ります。
十一面観音菩薩は顔が11体あるから、集中しなければならない時間が長いので、大変です。
集中力が切れかけたら、潔く休憩することにします。
切り絵制作に使用しているナイフは2本。これを部分によって使い分けています。
自分の指は、昔に木彫をやっていたから骨が太く、そして指の関節が硬いので、持ちやすく操りやすいように、ナイフの柄はかなり太くしています。
太めの万年筆ぐらいはあるかな。
他の神仏切り絵師さんは、細いナイフを巧みに操りますが、僕にはそれができません。
仏像の頭上にある仏顔を、一つひとつ切り始めます。
一つが小さいので、切り始めてからもう少し大きくすれば良かったかなと思いました。
今回はこのまま切り進めます。
小さな仏顔の周りの装飾を切っていきます。
この部分ができると仏の光背になります。
この部分ができると仏の光背になります。
光背部分ができあがると、すぐに周りの黒い部分を切り離したくなりますが、それをすると切り絵の強度が弱くなり、何かの拍子にちぎれてしまいやすくなるので、周りを切るのは一番最後にとっておきます。
本来は後頭部にある大笑面ですが、せっかくなので胸元に持ってきました。
いつも心は満面の笑顔で!という思いを込めて。
いつも心は満面の笑顔で!という思いを込めて。
十一面観音の体を切り始めます。
さらに雲海から仏像が浮き出るようなイメージに仕上げていきます。