作品名/森の奏者と天の音色
大きさ/300mm×300mm
販売価格/ご相談受付中
奏者が語るのはこの世の無情か?それとも希望の物語か?
コロナウイルスに支配された社会、何度も出される緊急事態宣言に閉塞感を感じながら、人間はそれぞれが独りということを思い知らされる。
自分は独り、他人の中の独りとしてこの世を生きています。
人間は古来から集団の中で自分を見出し、暮らしてきた。特に日本人は孤独であることを苦手とする人が多い。
外出や交流を控えることが日本人の魂に「歪み」をもたらしているのではないか?
ある者は独りで生きることの強さを持とうとし、ある者は独りの中で仲間を欲している。
私自身もそんな行き場のない想いをめぐらしながら、悶々とした日々を過ごし、新しい切り絵作品にもなかなか手がつけられずにいました。
そんなときに思い出したのは、「耳なし芳一」の物語。
人を愛し、人を求め、人を癒やす・・・孤高の法師の存在を描きたいと思った。
そして亡霊を恐れる弱い面も表現したいと下描きをはじめました。
弱さと強さを併せ持ちながら、希望を与えるような絵を表現したい。
今の社会で人生を生き切れないと思っている人がいるならと、森の奏者が天の音色にのせて物語を語りはじめる・・・。
それはこの世の無情か?それとも希望の物語か?
生死の物語を弾き語る法師の姿は、純真無垢な童で表現
森の奏者の姿は、純粋無垢な象徴としてほぼ裸身です。
さらに自己研鑽に勤しみ、修行中の存在であるとして、童の姿で描きます。
奏者から出る生命力を、樹木で表現。この樹木の描き方はスイスの伝統的な切り絵を参考にしました。
どこか牧歌的な雰囲気漂いながらも、滑らかで力強いところがポイントです。
ラフスケッチから切り絵の下描きの段階で、森の奏者の姿はシンプルにして、いつも細かく入れる肌の文様は控えめに描きました。
樹木はそれぞれの葉の重なりに注意して、全体的に平坦になり過ぎないようにしました。
これは紙を切る段階でも意識しました。
下描きを描いたしっかりと描いたぶん、仕上がりは早かったです。
影を見せることより、刃で切った線の緊張感を強調した額装
額装段階では、初めてベースの台紙に直接切絵を固定して、影ができる隙間を無くしました。
この決断にはかなり迷いましたが、仕上がりを見てこれも悪くない、細かい切り絵にはこちらの方が合うなと思いました。
なぜ今まで影にこだわったかというと、影がないと筆やペンで描かれた絵と判別がつかないと思っていたから。
しかし、実際は紙を切った切り口の鋭いエッジが際立つので、その心配は無用だったと確信が持てました。
絵筆やペンでは絶対に表現できない緊張感が、切り絵全体から感じることができます。
森に流れる琵琶の音色が世界を穏やかにする
森の奏者が大切な琵琶で弾き語りをするのは、自己研鑽のためでもあるし、その音色が世界を豊かにすると自信を持っているからです。
奏者は人の生から死へいたる様と、再び生を授かり輪廻転生する魂の営みの物語を語ります。
人生よりも遥かに長い魂の物語を知ると、今の困難が一時の些細な出来事のように思えるのです。
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