私が切り絵を始めたころはA4サイズぐらいものが中心でした。でもあるときギャラリーで1mぐらいある切り絵を見たときに「こんなに大きなものが切り絵で表現できるのか?どうやって作ったのだろうか?」と驚いたことがありました。
その時の私は手ごろなサイズの切り絵に閉塞感を感じ始めていたころであり、失敗を覚悟で大きな作品に挑戦することにしました。
スケール感がつかみづらいから下描きは手描きで行う
大きさは900mm×600㎜です。この大きさの切り絵を作るにあたって最初にやったことは、制作環境づくりです。
この大きさの紙を置く板を用意して、それを振り回しながらできる環境にするため制作部屋を片づけたりしました。
私は切り絵の下描きはいつもパソコンとペンタブレットを使ってデジタルで制作しています。だから大きな作品も修正や微調整がやりやすいデジタル制作ですすめました。
しかしモニター上で下描きが完成し、いざプリント出力してみると各部位がとてもおおざっぱで雑な絵に見えました。
モニター上では「細かすぎたかな?」と思うぐらいだったのに、実際のサイズに置き換えてみると随分と印象が変わるものです。
それから今度は出力したプリントに手描きで線を付け加えることにしました。
これでかなり自分のイメージに近い下描きが出来上がりました。
大きな紙面を切るのはたいへん
次にデザインナイフで切っていくのですが、最初は予想以上に苦戦しました。
紙面が大きいので部位ごとに力の関係性を考えながら切らないと、紙の重さでちぎれてしまいます。
さらに中心部分を切るときは、身を乗り出してほとんど中腰で切るのでとても疲れます。
カッティングマットを敷いた木の台を振り回しながら切ることもしばしばです。
お手頃サイズの切り絵制作とは全く異なる技術が要求されているような気がします。
長期間にわたって気が抜けないので、完成した時の達成感は格別でした。
予想以上に切り絵が上手くなっていた
そうしてこの大きさの切り絵を3作品作ったところで、いったんA3までのサイズに戻ることにしました。
戻って初めて気が付いたのは、自分の切り絵テクニックが向上していることです。
より繊細に、また大胆に切れるようになっていました。大きな作品だったからできた切り方なども参考にして応用することができるようになっていました。
大きな作品は紙面が大きくなる分、描くモチーフが多くなります。たぶんそれも影響しているのかなと思います。