絵描きに限らずクリエイターという人種は、自分の作品探求と同じぐらい道具や資料への探求に際限がない。
新しい道具が出たと知れば試したくなるし、他の作家が使っている道具が良さそうに思えたなら欲しくなるもの。
弘法筆を選ばずとは言いますが、道具にとことんこだわるのがクリエイターの性というものです。
でも間違った認識で自分を正当化してしまうと、いつの間にか抜けられない道具沼にハマってしまうので注意が必要です。
切り絵作家が欲しがるもの
切りやすく目に馴染みやすい紙。
ナイフを紙にほんのコンマ数ミリ刺し、すぅーっと鉛筆で線を引くように紙を切る。硬い紙は切った断面が鋭すぎて見た目が痛い。柔らかい紙は繊維が刃に絡みついて糸を引く。程よい硬さの紙が理想だけれど、数値で表せないのがもどかしい。
紙の表面の見た目の質感も大事です。半光沢のような微妙なテカリは作品が下品に見える。艶消しの深い色合いが、ミステリアスで作品の価値を上げてくれます。
紙の厚みはコピー用紙ぐらい。それより薄い紙だと切り絵の強度が心配になります。ただし、小さくて繊細な作品の場合は、強度の心配より切りやすさを優先して薄い紙のほうがいい。あとは繊細な作品ほどナイフの刃を頻繁に新しいものに変えることが鉄則です。
私は切り絵を始めた頃は、いろいろな紙を購入して試しました。結構出費したと思いますが、これは必要経費といえるでしょう。
手に馴染むナイフ
ナイフの刃はNTカッターやオルファカッターなど、使用するメーカーはもともと少ないのでほぼ決まってしまうが、購入するときにいちばんこだわってほしいのはナイフを取り付ける柄の部分です。
手の大きさは人それぞれなので、私は何本も試し買いをしては手に馴染まずに捨てることがよくありました。海外メーカーのデザインナイフにはユニークな形の柄があり、握りやすそうで物欲がそそられますが、自分が行き着いた結論は、既製品をカスタマイズすること。結局自分の手に馴染む道具は自分で作るしかない、という昔ながらの大工職人のような結論になってしまいました。
その他にも、作業机や座椅子、拡大鏡、額縁、額縁を作る道具、資料本など使いながらも、これで決まり!これで制作に関わる道具には満足した!最後!という境地にはまだ至っていません。
これが尽きない欲(別名:道具沼)というのでしょうか?
なぜ欲しい気持ちが湧き上がるのか?
消耗品は別として、絶対すぐ必要でないものを欲しがる心理は、理想とする自己実現に少しでも近づきたいからではないだろうか?と思います。
それが今、手に入れば、今が変わる、進化すると思い込むと必ず買ってしまう。
直感的に購入したものが本当に自分の成長に役立ったり、豊かな気分にひたれた成功体験が続くと、やがてそれが習慣化します。
いつの間にか自分を正当化して「気持ちを満たすために買う」という違う意味に置き変わってしまいます。無駄な買い物のはじまりです。これは軽い買い物依存症なのかもしれない。
物欲を制御して買い物依存症から脱却するためにしたこと
無駄な買い物をなくすためにしたことは、誰でも直ぐに思いつく方法ですが、欲しい物リストを作成することです。
ポイントは、最初に欲しいものリストを作ってはいけません。
まずは「いらないものリスト」と、「やらないことリスト」をつくります。
少なくともこれで無駄な買い物をしなくなり、自分の行動を客観視できるようになります。
そして、ネットショッピングで欲しいものがあったら、いったんそのサイトのほしい物リストやお気に入りリストに登録だけしておきます。
今すぐ買わなくてもいいけどひとまず欲しいものがこれにあたります。
衝動的に欲しいと思ったものは、時間が経つと欲しく無くなるものが多いので、それらは後日リストから削除します。
この方法で健全なお買い物を続けることができるようになります。