写実表現にこだわるつもりはない。将来は神仏切り絵で絵本がつくりたい。

写実表現にこだわるつもりはない。将来は神仏切り絵で絵本がつくりたい

私が憧れる切り絵作家の一人に「切り剣さん(福田理代さん)」という方がいます。
ペンや絵の具で描くのとは違って表現の幅が限られる切り絵という技法の中で、生き生きとした写実表現を実現させた第一人者です。
代表作の「海蛸子」を見ると静止画のはずなのに、うねうねと動いているような錯覚をおこさせます。
単にリアリティを追求しているのではなく、近くでじっくりと様々な文様を組み合わせた非常に繊細な切り絵になっていることがわかります。
実物を目の前にしても、ただただすごい作品で圧倒されると同時に、これはとても真似できるものではないなぁと思いました。
この絵がうごめくような躍動感を、私の作品にも取り入れることはできないだろうか?と考えるようになりました。

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目指すは北斎のような描写法をさらに発展させること

切り剣さんの他にも動きを表現できている切り絵作家は何人も存在します。
動きの表現は、線を巧みに活かすか? それとも明暗を強く意識して描くか? この2つの描写方法を意識して作家の感性で巧みに描かれたものです。ただ単に写真を模写(トレース)しただけでは、静止した絵に過ぎません。

絵画の基本として、「光」の方向を意識して描くことはとても重要だと考えています。

私も動きや立体感の演出のために明暗を意識するようになりました。でも絵のモチーフがリアリティを追求したものではないので、中途半端な違和感しか残りませんでした。

私が最も影響を受けているのは、江戸時代の錦絵や浮世絵です。特に北斎の描写には平面的でありながらも写実的な要素が描き分けられていて、私が切り絵で表現したいのは北斎のような描写なのだと気づきました。もちろん切り絵なのでそのまま真似してもうまくいきませんから、切り絵用にさらに描き方を模索する必要があります。

[wpap service=”with” type=”detail” id=”4336065926″ title=”切り剣: 福田理代切り絵作品集”]

デザイン画や図案集にはしたくない。あくまでも物語が成立する絵画を描きたい

現在日本の多くの作家が描いている切り絵の特長は、どちらかとえいば花鳥風月をモチーフにした「図案」的な趣が強い。漫画やアニメをモチーフししたものも同様にキャラクターを配置した「デザイン画」になっています。
万人に好まれ、売ることを考えるならその方が良いのかもしれません。

しかし切り絵の中にはもう一つの流れがあって、切り剣さんのように写実的なイメージを追求する作家や平面から離れて立体物に切り絵を施す作家、貼り絵の要素を組み合わせて絵本的な作風を目指す作家など、従来の物語性を持った絵画的な切り絵を目指す作家がちらほらと現れています。
私もその中のひとりです。

私はInstagramも運用していますが、フォローしているのは海外の芸術家がほとんどです。日本の芸術家はTwitterでフォローしています。
海外にも切り絵の文化があるので作家もたくさん存在しています。日本人とは全く違った技法や絵のイメージを観ることができるので、とても刺激になります。

海外の切り絵作家はどちらかというと図案よりも絵画的なイメージが強く、しかも作品が大きいのが特長のような気がします。
その国の住宅環境が影響してるんでしょうね。広い部屋に恵まれると大きな作品がつくれるから良いなぁ。

私の切り絵の原点は滝平次郎が描いた「八郎」の絵本です。ぶっとく力強い線のタッチと、豪快で優しい絵が観る者の情感を沸き立たせるような絵本です。
私の作品を見ると「えっ?全然違うのでは?」と思われるかもしれませんが、私の絵心の源流にははっきりと八郎のイメージがあります。
作風は社会背景の影響を受けて変わることもあるかもしれませんが、神仏切り絵を作る私はそんなに大きな変化はないのかもしれません。

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