劇団壱劇屋「猩獸」から得た描きたい人間像

私が小劇場で行われる演劇が好きになったきっかけは劇団壱劇屋の舞台。
劇団壱劇屋の舞台は、迫力満点の殺陣が十分すぎるぐらいに堪能できるのと同時にセリフのない物語でも泣かせてくれるという素晴らしいものです。
ちょうど一年ぐらい前の2019年3月に劇団壱劇屋「猩獸」を観ました。まさかのストーリー展開に、私の予想がどんどん裏切られて、かなり興奮したことをよく覚えています。
前回見た舞台で上演前に映像でこれまでの舞台の紹介が流れていたのですが、その中に今回の「猩獸」があり、とても観たくてたまらなかったのです。ビデオは販売されていたのですが、やっぱりいきなり映像よりも演劇は生で観たい。それが今回叶いました。
しかも、旧作「猩獸」の再演と新作「猩獸」の上演が同時にありました。
その時の感想を綴っています。

劇団壱劇屋「猩獸」から得た獣の真心

目次

劇団壱劇屋「猩獣」新作

あらすじ+++++
嫁いでいく娘が、幸せでありますように。
小さな家族の小さな願い。
父は家族を守りたかった。
父はある言い伝えを思い出す。

“猩獸あらわれるところ 厄災がおとずれる”

父は自らが猩獸となり花を贈る。
家族を守るために。
++++++++++

誰を守り、誰を討つのか?後半の目まぐるしく変わる展開と殺陣に、瞬きするのも惜しく、その瞬間に何かが変わってしまうのではないか?と目を見開いたまま観てしまった。
舞台にボタボタと落ちる竹村さんの汗が、その凄さ激しさを物語ります。
西分さん演じる疏芭が見事でした。冷徹な参謀かと思いきや情熱的過ぎる女性だったり、それが狂気に変わる瞬間の大きな叫びに鳥肌が立った。その後のアクションの凄さといったら、もう言葉にできないほどです。
小林さんの天化が、とてつもなくかっこいい!最初はいつものパターンで嫌な奴と思ってたら、いつのまにか感情移入しちゃて大好きなキャラになった。
劇団壱劇屋「猩獣」新作は、登場人物の性格や感情や環境が変わっていく様が見事で、とても重厚な物語になっていた。
家族を主題にしているというが、ありきたりなものではなく、とても斬新で意外な演出で表現され、なるほどそうきたかと唸ってしまう。とにかくこの舞台は、今観ておかないときっと後悔するだろうと本当に思いました。

猩獸

劇団壱劇屋「猩獣」再演版

あらすじ+++++
黒き集団は女を求め、静かに村へやってくる。
小さな村の小さな想い。
男は女を守りたかった。
男はある言い伝えを思い出す。

“猩獣あらわれるところ 厄災がおとずれる”

男は自らが猩獣となり花を贈る。
女を守るために。
++++++++++

物語がシンプルな分、場面毎の演出方法が斬新でウワッウワッて、観てるこちらが斬られるんじゃないかと思うぐらい迫力がありました。
とにかくアクションがもの凄く激しいから、途中からバテてくるんじないか?と思って観てましたが、後半からさらに役者の動きにキレが出てきて、いったい彼らの肉体の内部で何が起きているのか?ラストまで圧倒され続けました。
中でも岡村さん演じる九郎が猩獣と変化してからの殺陣は、スピード感と迫力があって息するのを忘れるぐらい夢中になって観ました。いや、目を逸らすことができなかった。血の色に染まった白い花を掴んでウガァァァって嗚咽するところでは、胸が苦しくなるぐらい気持ちが九郎と一体になり、ただただ悔しさと悲しさが入り混じった苦い血の味を感じたなぁ。

NMB48のライブ以来となる上枝恵美加さんを観ることができるのも、私がこの舞台を観る楽しみのひとつでした。それにしてもキビキビと動くなぁ、殺陣も見事でしたし、感情的な表情もなんだか観ていてゾクゾクしました。もともと表情が豊かな方だったけど、さらに上手くなってたなぁ。

赤星さん演じる黒歿は、ひたすらに不気味で怖かったぁ。静かに立っているだけで怖い存在。その黒歿が動き出すと最強すぎる!不死身の死神のようでした。
不気味と言えば高安さん演じる布女。キャーハハハハハという高笑いが似合いすぎて怖い。首の動きも不気味さを増してました。そして布が舞う中での激しい殺陣は圧巻でした。

観劇終わって

劇団壱劇屋「猩獣」初演再演版も新作版も、まず会場に入って舞台を見ると墨絵師・御歌頭さんの一対のカッチョイイ背景画が目に飛び込みます。この絵を見ただけで、どんなすごい舞台が展開されるのか期待が高まります。
そして衣装がみんな良いのです!デザイン性だけでなく、柄の組み合わせや色合いが舞台の内容にぴったりマッチしているし、何よりも人物の個性を引き立てているから、衣装を見ただけで登場人物の性格や生き様がわかる!人物説明の言葉なんて必要ない!と思えました。

人知を超えた存在に触れたときの人間の有り様が創作意欲を刺激する

私が作品に「邪鬼」を取り入れようとしたのも、「猩獣」を観劇した影響が大きいと言えます。
「猩獣」に取り憑かれた人間には人の弱さ、愚かさ、狂気、欲望といった本能的な意志が集約されているように思えてならない。怖くて奇怪な獣のようで、心が脆く崩れやすい奇妙な存在。それこそ私が描きたかった本来の人間の姿ではなかろうかと直感したのです。
姿形は人間とは異なれども、私はそんな人間たちの姿を一人ひとり描いていきたい。異形の神の姿をした人間を。

劇団壱劇屋「猩獸」から得た獣の真心

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